〜上座部・大乗・チベット仏教の3つの視点〜


はじめに
「自分らしく生きる」という言葉は、今の時代とてもよく聞きますよね。
でも――仏教の立場から見ると、
「自分とはそもそも何か?」という問いそのものを深く見つめ直すことになります。
仏教ではすべての宗派に共通して、
「諸法無我(しょほうむが)」――つまり「固定した自分はいない」という考え方があります。
ただし、その真理を どう生きるか・どう実践するか は、
宗派によって少しずつ違います。
今回は、
- 🌟 上座部仏教(テーラワーダ仏教)
- 💖 大乗仏教(日本仏教の主流)
- ☸️ チベット仏教(密教的伝統)
この3つの立場から、「自分らしく生きる」とは何かを見ていきましょう。
🌟 上座部仏教 – 自立した修行で「本当の自分」を見つける

上座部仏教はスリランカやタイ、ミャンマーなどで受け継がれてきた、最も古い仏教の流れです。
ここでは、「自分らしく生きる」とは――
外の価値観に頼らず、自分の心を見つめて苦しみを手放していくことを意味します。
🔥 ポイント1 – 自灯明・法灯明(じとうみょう・ほうとうみょう)
お釈迦様の最後の教えの一つに、
「自らを灯明とし、法を灯明とせよ」 という言葉があります。
これは、「他人まかせではなく、自分自身と仏の教えを拠りどころに生きなさい」という意味です。
🔥 ポイント2 – 瞑層による自己観察
上座部の修行では、ヴィパッサナー瞑想 が大切にされます。
呼吸や感情をただ観察し、そこに執着しない心を育てていきます。
そうして「私」という思い込み(自我)を手放すことで、
苦しみの根源が静まり、涅槃(ねはん)=心の安らぎ に近づいていきます。
🔥 ポイント3 – 自分を慈しむことから始める
上座部の慈しみの瞑想では、
まず「私が幸せでありますように」と祈ることから始めます。
自分を大切にすることが、他者への優しさにつながるのです。
「自分らしく生きる」とは、煩悩に縛られた自分を超えて、
真に自由で穏やかな心を見つけること――それが上座部の道です。
💖 大乗仏教 – 他者を想う中に「自分らしさ」がある

日本や中国、韓国などに広がる大乗仏教では、
「菩薩(ぼさつ)」という理想的な生き方が中心にあります。
「自分らしく生きる」とは、
他の人の幸せを願いながら、自分の力を生かすこと。
🌿 菩薩の生き方
菩薩は自分の悟りを後回しにしてでも、
他の人を救おうと努力する存在です。
すべての人には「仏性(ぶっしょう)」――仏になる可能性があると考えます。
「人のために働くことこそ、自分を生かす道」
この発想が、大乗仏教の「自分らしさ」の核心です。
💮 ありのままの自分を受け入れる(浄土真宗など)
たとえば浄土真宗では、
煩悩まみれの「ありのままの自分(凡夫)」を否定せず、
阿弥陀仏の慈悲に身をゆだねる生き方を大切にします。
その中で、他者や世界と深くつながっている自分に気づく。
これが「縁起(えんぎ)」の考え方です。
他者を思いやる心が、そのまま“自分らしさ”の表れになる。
☸️ チベット仏教 – 感情さえも悟りに変える「すべてを活かす道」

チベット仏教は大乗仏教の一派でありながら、
特に密教(ヴァジュラヤーナ)の要素を強く持っています。
ここでの「自分らしく生きる」とは、
怒りや欲望など“人間らしい感情”を否定せず、
それらを悟りのエネルギーに変えていくこと。
🔱 感情の変容という智慧
たとえば、怒りを破壊のエネルギーではなく「明晰な智慧」に変え、
執着を「慈悲」に変える――そうした実践がタントラの特徴です。
つまり、「弱さ」や「欠点」と思っていたものも、
見方を変えればすべてが修行の糧になるのです。
🧘 マインドフルな生き方
チベット仏教では「今ここ」に気づき続けることが重視されます。
日常の行い一つひとつを仏の教えとして意識することが、
最も深い「自分らしさ」への道になります。
すべての感情・出来事を、悟りへの糧として活かす。
それがチベット仏教の“ダイナミックな自分らしさ”です。
💡 3つの仏教の「自分らしさ」比較まとめ
| 教派 | 目指す境地 | 「自分らしさ」の焦点 | 主な実践 |
|---|---|---|---|
| 🌟 上座部仏教 | 煩悩が消えた心の平安(涅槃) | 自我を手放し、内なる自由を得る | 瞑想・戒律・自灯明 |
| 💖 大乗仏教 | すべての人の救い(菩薩の道) | 他者を助けることで自分を生かす | 六波羅蜜・念仏・座禅 |
| ☸️ チベット仏教 | 即身成仏(この身で悟る) | 感情を悟りに変えて全てを活かす | タントラ・観想・師への信頼 |

仏教が教える「自分らしさ」とは、
「固定した私」にしがみつかない自由さ のことです。
- 上座部では、自分を見つめ、手放す中で自由を得る。
- 大乗では、人とつながり、奉仕する中で真の自分を生かす。
- チベットでは、感情すら悟りに変えて、全てを肯定する。
それぞれ違っていても、すべては「苦からの解放」という同じゴールに向かっています。
自分らしく生きるとは、
「ありのままの自分を超えて、自由に、優しく生きること」。



