~ シヴァ派・ヴィシュヌ派・シャクティ派の三つの視点からやさしく解説 ~


はじめに
現代では「自分らしく生きる」という言葉をよく耳にします。
多くの場合、それは「自分の好きな道を選ぶ」「自由に生きる」といったイメージで語られます。
でも、インドのヒンドゥー教では少し違います。
ヒンドゥー教では、
「自分らしさ」とは、宇宙の秩序(ダルマ)に調和しながら、自分に与えられた役割を生きること と考えます。
この記事では、
- ヒンドゥー教の基礎となる「スワダルマ(自分の道)」
- 三大宗派(シヴァ派・ヴィシュヌ派・シャクティ派)による「自分らしさ」の考え方
これらを、難しい専門用語を使わずに、やさしく丁寧にまとめていきます。

第1章:ヒンドゥー教の基本「スワダルマ」
🌱 あなたが本来もっている「自分だけの道」
ヒンドゥー教の中心にある考え方が「ダルマ(調和を保つ秩序)」です。
その中でも特に大切なのが、
スワダルマ(自分自身のダルマ)
です。
スワダルマとは、
- あなたの性質
- あなたの才能
- あなたの情熱
- 過去から受け継いだカルマ(行いの影響)
これらによって決まる “あなたにしか歩めない道” のことです。
🔶有名な聖典『バガヴァッド・ギーター』の言葉
記事の参考として、とても象徴的な一節があります。
「他人の道を完璧に歩むより、不完全でも自分の道を歩くほうが良い」
ヒンドゥー教では、
「上手くできるかどうか」よりも「自分の本質に沿っているか」が大切 とされます。
まわり道に見えても、
自分の魂が「これが私の道だ」と感じる方向を進むことが、
もっとも深い幸せにつながる——
これがスワダルマの考え方です。
第2章:三大宗派に見る「自分らしさ」の三つの形
ヒンドゥー教には、特定の神を中心に信仰する大きな宗派がいくつもあります。
その中で特に大きいのが次の3つ:
- シヴァ派(シヴァ神)
- ヴィシュヌ派(ヴィシュヌ神)
- シャクティ派(女神:シャクティ)
それぞれが「自分らしく生きる」ことを、まったく違う角度から教えてくれます。
2.1 シヴァ派 — 🌌「本来の自分(内なる神性)を思い出す」道

シヴァ派、特に「カシミール・シヴァ派」は、
あなたの本質そのものが “シヴァ(普遍的な意識)” であると教えます。
「え?私が神さま?」
そう思う方もいるかもしれません。
しかしこの考えは、
「あなたの奥深くには、無限の可能性と意識が宿っている」
という、とても優しいメッセージです。
🔹ポイントは「思い出す」こと
シヴァ派が大切にするのは、
再認識(プラティヤビジュニャー)=「本来の自分を思い出す」
という考え方。
私たちは日々の忙しさや不安の中で、
「私は小さな存在だ」「できない」「不完全だ」
と錯覚してしまいます。
でもシヴァ派はこう言います。
あなたはもともと大きな意識そのもの。忘れているだけ。
瞑想やヨーガは「新しい何かを身につける」ためでなく、
すでに持っている光を見つけ直す作業 なのです。
2.2 ヴィシュヌ派 — 💙「神との愛の関係」の中で自分を生きる道

ヴィシュヌ派は、
あなたと神は“別の存在”であり、
その違いがあるからこそ「愛」が生まれると考えます。
ここで大切なのは、
自分らしさとは、神との関係の中で役割を見つけること
という視点です。
🔷ラーマーヌジャ(限定不二一元論)
彼の考えでは、
- 私たちは神の「一部」
- でも個性や意志はちゃんと持っている
という、とても温かい世界観です。
解脱しても「個としての自分」は消えません。
むしろ、永遠に愛し合う関係が続くのです。
🔷マドヴァ(二元論)
マドヴァはさらにはっきり、
- 神と個人はまったく別
- 一人ひとりの魂は生まれつき違う性質を持つ
と説きました。
なので、
「あなたはあなたのままでよい」
という個性の尊重が、とても強く打ち出されます。
2.3 シャクティ派 — 🔥「内なる力(シャクティ)を目覚めさせる」道

シャクティ派は、宇宙を動かす根源エネルギーを
女神(シャクティ) として崇拝します。
そしてこのエネルギーは、
実は あなたの体の中にも眠っている と考えます。
それが
クンダリニー・シャクティ
と呼ばれるエネルギーです。
🔥「自分らしさ=内なるエネルギーの解放」
シャクティ派では、
瞑想・マントラ・タントラ的ヨーガを通じて、
体の中に眠っていた力が目覚めていきます。
- エネルギーが上昇するにつれ、
- 心のブロックが外れ
- 恐れが溶け
- 創造性があふれ
- 生きる喜びが戻ってくる
と考えられています。
つまり、
「自分らしさ」は頭だけで考えるものではなく、
身体の中のエネルギーが目覚めていく過程 だというわけです。
結論 — 三つの道は違っても、目指す場所は同じ
ヒンドゥー教の「自分らしく生きる」は、
単なる自己中心的な自己実現ではなく、
”宇宙・神・内なる力 ”との関係の中で本質の自分を見つけていく旅
です。

まとめると—
- シヴァ派:本来の自分(無限の意識)に目覚める道
- ヴィシュヌ派:神との愛の絆の中で役割を果たす道
- シャクティ派:内なる力を開花させ、自分をエンパワーする道
どの道も、
「誰でもない、自分自身を生きる」ための深いヒントを与えてくれます。



