– 神さまから預かった大切なもの –

はじめに
私たちは普段、「お金は自分のもの」だと考えがちです。
でもイスラム教では、お金や財産は神さまから一時的に預かっているものだと考えられています。
この考え方を知ると、働き方や使い方、社会とのつながりが少し違って見えてきます。
今回はイスラム教における「お金」の考え方を、3つの派の流れ(スンニ派・シーア派・スーフィズム)から、やさしく見ていきましょう。
お金は「自分のもの」ではない?
イスラム教の大切な考え方「信託」

イスラム教では、お金や財産の本当の持ち主は神さまだと考えます。
人間はそれを一時的に管理している代理人のような存在です。
つまり私たちは、
- 好き勝手に使う「所有者」ではなく
- 正しく使う責任を持つ「管理者」
この考え方を「信託(しんたく)」と呼び、イスラム経済の土台になっています。
イスラム教に共通する2つのルール

① 利子を取らない(リバーの禁止)
イスラム教では、
何のリスクも取らずにお金だけが増える仕組みは公平ではないと考えます。
お金を増やすなら、
- 努力
- 責任
- リスク
を、関わる人みんなで分かち合うべきだ、という考え方です。
② ザカート(義務の寄付)
ザカートは「寄付」ですが、単なる善意ではありません。
富が一部の人に集まりすぎないようにする社会の仕組みです。
自分の財産を清め、
困っている人のために社会へ循環させる。
それがザカートの役割です。
3つの立場で見る「お金」の考え方
スンニ派 – 社会全体をよくするためのお金

イスラム教で最も多いのがスンニ派です。
スンニ派では、イスラム法(シャリーア)に基づいて、社会全体の幸福を重視します。
- 貯金や資産に対して
- 年に約 2.5% のザカートを支払う
- 国や公的機関が管理し、福祉に使われる
とても制度的で分かりやすい仕組みです。
シーア派 – 宗教指導者を支えるお金

シーア派では、宗教指導者(イマームや法学者)の役割がとても重要です。
- 「フムス」という宗教税
- 生活費を除いた利益の 20%
- 国ではなく宗教指導者が管理
これによって、宗教共同体の独立が保たれています。
スーフィズム – 心を縛られないためのお金

スーフィズムは、制度よりも心のあり方を大切にします。
「清貧」という言葉が使われますが、
お金を持たないことが目的ではありません。
- 富を持っても執着しない
- お金は神さまのために使う道具
お金との距離感を整える、心のトレーニングなのです。
| 観点 | スンニ派 | シーア派 | スーフィズム |
|---|---|---|---|
| 基本の考え方 | 法と制度で社会全体をよくする | 宗教指導者を中心に共同体を守る | 心の成長と神とのつながりを重視 |
| お金の位置づけ | 社会を支えるための仕組み | 信仰共同体を支える資源 | 心を試すための道具 |
| 主な制度・実践 | ザカート(義務の寄付) | フムス(宗教税) | 清貧・分かち合い |
| 金額の目安 | 資産の約2.5% | 利益の約20% | 決まった割合なし |
| 管理する人 | 国・公的機関 | 宗教指導者・法学者 | 個人の良心 |
| 目的 | 社会福祉・公平 | 教団の独立と維持 | お金に執着しない心 |
| 特徴を一言で | 仕組み重視 | 指導者重視 | 心の在り方重視 |
3つの考え方に共通するメッセージ

スンニ派、シーア派、スーフィズム。
方法は違っても、共通しているのはこの考えです。
お金は目的ではなく、手段である
信仰のため、
社会の正義のため、
人の心を育てるため。
イスラム教では、お金はそのために使われるものなのです。

おわりに – 私たちへの問い
では、私たちにとってお金は何のためにあるのでしょうか。
このイスラムの視点は、自分の価値観を見つめ直すヒントになるかもしれません。



